生(き)の豆腐
先日、 長野県南佐久郡小海町
お豆腐屋さんは朝が早いのです。僕たちは朝5:30にお邪魔しましたが、実はもう既にお豆腐作りは最後の方で、皆さんは2:30頃から始めているそうです。皆さんといっても、そこの旦那と奥さんがやっています。普段は、旦那は昼間の配達とかがあるので、手伝いの人が来るそうです。
工場という言葉を使わなかったのは、そこが工場という言葉からはちょっと外れるかな、と思ったからです。要するに、プレハブの小屋で作っているのですが、手作りお豆腐屋さんのショップ部分が無い、というイメージです。小屋の中は、原料の大豆を潰し、煮て、豆乳とおからに分ける機械が入っています。ここまでは機械化されています。
お豆腐はその豆乳ににがりを入れて固め、型に流し、水分を絞り切り分けて出来上がりです。その間も、時間の調整や、攪拌、などなど手が掛かります。僕たちはその一部始終を見てきたわけです。そして、その時々に出来たものを味見させていただきました。まずは、機会から搾り取られた、豆乳です。湯気の立つ、生の豆乳はたまらない味でした。原料がいいから臭みが無く、ほんのり甘くて口当たりも抜群です。これが本物の豆乳か、と感動でした。次は、にがりを入れ手固まった、豆腐の赤ちゃんです。それを型に入れるときに、一部を皿に取って、食べささせてくれました。要するに、寄せ豆腐です。これまた、醤油も塩も何も味付けなしで食べたのですが、お豆腐そのもの(当たり前)、本物のお豆腐なのです。この辺りで、結構僕たちは満足していました。
さて、6:00頃に、当家のおばあちゃん(93歳)の登場です。おばあちゃんは93歳とは思えない色艶で、かつては(失礼)町の美人ちゃんだったに違いありません。そうです、ここの手上げ油揚げはこのおばあちゃんの手によるものなのです。
おばあちゃんの登場までに、実は油揚げ用の豆腐が作られています。普通の豆腐よりも大豆が少なめの豆腐で、1.5cmくらいの厚さで、10×5cm角に切ってあります。おばあちゃんとお手伝いのおばさんが、低温と高温の二つの油でその豆腐を揚げます。1枚5分くらいでしょうか。10×5cmの豆腐が25×10cm暑さ3cm位に上ります。
「あっちにお茶があるからちょっと休んで」と誘われるままに母屋に行くと、なんとそこには朝食が用意されていたのです。ピカピカのササニシキに、シジミのお汁、それに油揚げとやはりできた手の豆腐で作ったがんもどきを食べさせてもらったのです。それはそれは、なんとも贅沢な朝食でした。本物っておいしいな、貴重だな、と実感した取材でした。
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