自己教育力
「ここって塾!?」藤井 東(フジイ ハル)著文芸春秋社
藤井氏は
山梨県山梨市
で小さな学習塾を自営している。この本はこの塾での実践記録である。塾ではいわゆる授業はしない。子どもたちがやってきて、好きなことをすればいい。勉強する子ももちろん居る、おしゃべりをする子、ゲームをする子、本を読む子、みんな自由である。藤井氏はそこで、彼らのそばに添うのである。寄り添いながら、彼らの話を聴き、一緒におしゃべりをし、質問に答え、一緒に考え・悩む。藤井氏はそこで子どもたちのそばに寄り添い、子どもたちの声を聴き、子どもたちが自分で考え、答えを出すサポートをしているだけだ。「だけだ」、と書いたけれど、これはそう簡単に出来ることではない。藤井氏はそれを30年間やり続けてきたのだ。藤井氏はそうやって子どもたちの声を聴きながら、学校の問題や社会の問題を感じ取っている。そうして、学校教育が子どもたちの自己教育能力を奪う、という警鐘を鳴らしている。子どもが持つ自己教育能力は、実は子どものというよりは人間の自己生命力である。学校教育はこの人間本来の能力を弱めているのである。この自己生命力や自己教育力の喪失が、実は今の日本の矛盾や問題の根本原因なのではないだろうか。日本中に広がっている閉塞感の出所ではないだろうか。
この本では、子どもたちの声を、藤井氏が再現してくれている。そして、読者は子どもたちの持つ自己教育力、自己生命力を追体験できるのである。
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